この記事でわかること
- ヒューマンスキルの概要
- ヒューマンスキルの主な構成要素
- ヒューマンスキルを学ぶメリット
- ヒューマンスキルにおける課題
- Tokky(とっきー)オススメトレーニング方法

簡潔に言い換えれば人間力や社会性のことですが、実態が曖昧のため、抽象的なイメージを抱いている方が多いのではないでしょうか?
ヒューマンスキルは、1955年にロバート・L・カッツが提唱したカッツモデルで、管理職に求められる3つのスキルの一つとして登場しました。
カッツモデルとは、役職に応じて管理職に求められる3つのスキルのバランスが変化することを示した理論です。
そして、2000年代以降、日本の教育・人材開発業界などによって、管理職に求められるスキルの体系図が時代の変化に合わせて再構築されました。
それが、カッツモデルを基にP.F.ドラッカーのナレッジワーカーに関する理論を混ぜ合わせたドラッカーモデルです。



ドラッカーはマネジメントの父と称される人物であり、様々なマネジメント理論を提唱してきました。
それらの中で、組織やマネジメントにおける人としての在り方や姿勢、その実現のための自己マネジメントの重要性などについてドラッカーは説きました。
加えて、現代ではマネジメントだけでなく、転職およびそれに伴うキャリアアップでかなり見られてくるスキルでもあります。
今回は、このような背景を踏まえて、
「マネジメントにおけるヒューマンスキルって具体的に何を指しているの?」
ということをお話ししていきます。



自身の普段のマネジメント業務から編み出した独自の内容も伝授していきます!
ヒューマンスキルの概要
まず、ヒューマンスキルについて、カッツモデルとドラッカーモデルの観点からお話ししていきます。
カッツモデルにおける概要
カッツモデルにおけるヒューマンスキルとは、コミュニケーションを取りながら他者と協力して集団の中で円滑に活動できるための関係性を築く能力のことです。
カッツモデルにおいてこのスキルは、求められる種類の内容や比重は多少異なりつつも全てのマネジメント階層で重要なスキルとなっています。
なぜなら、組織に属している以上、どのマネジメント層でも人と関わることが避けられないためです。



カッツモデルについて詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください!


ドラッカーモデルの概要
一方、ドラッカーは、ヒューマンスキルについて直接的な言及はしていませんが、組織内における人間関係に関して次のようなことを述べています。
「対人関係の能力をもつことによってよい人間関係がもてるわけではない。自らの仕事や他との関係において、貢献に焦点を合わせることによってよい人間関係がもてる。
引用:『ドラッカー名著集(1) 経営者の条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
「われわれは、貢献に焦点を合わせることによって、コミュニケーション、チームワーク、自己啓発及び人材育成という、成果をあげるうえで必要な人間関係に関わる基本条件を満たすことができる。
引用:『プロフェッショナルの条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
上記の記述からも少し読み取れますが、マネジメントにおいて、ドラッカーは「成果をあげること」をとても重要視しています。
そして、
「成果をあげるためには、貢献に焦点を合わせなければならない。」
引用:『プロフェッショナルの条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
とも述べています。
加えて、そのために、
「これからは誰もが自らをマネジメントしなければならない。自らをもっと貢献できる場所に置き、成長していかなければならない。」
引用:『プロフェッショナルの条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
としました。
このようなことを踏まえて、ドラッカーは、成果をあげるためには八つの習慣と自分で以下の要素をマネジメントすることが必要であるとしました。
※1 引用:『ドラッカー名著集(1) 経営者の条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
※2 参考:『プロフェッショナルの条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】



ここで、自己マネジメントにおける責任や価値観には「知りながら害をなすな」といった社会的責任または倫理も含まれています。
さらに、
「つまるところ、いかなる一般教養を有し、マネジメントについていかなる専門教育を受けようとも、経営管理者にとって決定的になるものは教育やスキルではない。それは真摯さである。」
引用:『ドラッカー名著集(3) 現代の経営 下』 P.F.ドラッカー【著】上田惇生【訳】
と、ドラッカーは述べています。
ここで、真摯さの定義は難しいが、真摯さの欠如を定義することは難しくないと考えて、次のようなことも述べました。
- 強みよりも弱みに目を向けること
- 「何が正しいか」よりも「誰が正しいか」に関心を持つこと
- 頭の良さを重視すること
- 部下、特に有能な部下に脅威を感じること
- 自らの仕事に高い基準を定めないこと



つまり、ヒューマンスキルで必要な能力または要素は、ドラッカーのこのような考えが基になっているということです。
ヒューマンスキルの構成要素
上記の内容を基に、ヒューマンスキルの主な構成要素として、次の8つが挙げられます。



これらについて、一つずつお話ししていきます。
リーダーシップ力
リーダーシップ力とは、その組織の成果目標を達成するために他者によい影響を与える能力のことです。
しかし、マネジメントにおけるリーダーシップは違うとドラッカーは考え、次のような定義をしました。
「リーダーシップとは姿勢でもある。(中略)リーダーシップとは、人の視線を高め、成果の基準を上げ、通常の制約を超えさせるものである。」
引用:『ドラッカー名著集(2) 現代の経営 上』 P.F.ドラッカー【著】上田惇生【訳】
この背景として、リーダーとしての能力とリーダーであることの要件からリーダーシップの本質を下記のように定めていたことがあると推察されます。
※1 参考:『ドラッカー名著集(4) 非営利組織の経営』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
※2 参考:『プロフェッショナルの条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
ここで、成果をあげる八つの習慣を踏まえて、
「考えることは、なされるべきことと、チームのことだけである。そこから信頼が生まれ、なされるべきことがなされる。」
引用:『ドラッカー名著集(4) 非営利組織の経営』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
としました。
他方、リーダーシップに関して、マネジメントの適性という観点から、
「本気であることを示す決定打は、人事において、断固、人格的な真摯さを評価することである。なぜならば、リーダーシップが発揮されるのは、人格においてだからである。多くの人の模範となり、まねされるのも人格においてだからである。」
引用:『現代の経営』㊤ P.F.ドラッカー【著】上田惇生【訳】
と述べています。



さらに、「信頼するということは、真摯さに対する確信である」とも述べています。
ファシリテーション力
ファシリテーション力とは、目的ある対話や協働の場において円滑に参加者の意見を引き出しながら合意形成を促進することによって、組織やチームにとって価値ある成果を創出する能力です。
ファシリテーション力は、次の4つのスキルから構成されています。
- 場/空間デザインスキル
- 対人関係スキル
- 構造化スキル
- 合意形成スキル
このファシリテーション力は会議などの場だけでなく、目的のある対話の中で効果を発揮する能力です。
そのため、会議でも目的を定めることは重要であり、またドラッカーも会議に関して次のような言及をしています。
「会議を成果あるものにするには、会議の冒頭に、会議の目的と果たすべき貢献を明らかにしなければならない。そして、会議をその目的に沿って進めなければならない。目的のある会議を、誰もが勝手にアイデアをいい合う懇談の場としてはならない。あるいは、思考と検討のための会議を誰かのプレゼンテーションの場にさせてはならない。」
引用:『ドラッカー名著集(1) 経営者の条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】



つまり、ファシリテーション力は、会議の生産性をあげつつ人の強みを活して成果をあげる能力であるとも言えます。
コミュニケーション力
コミュニケーション力とは、聞く力・伝える力・理解する力・共感する力など、さまざまなスキルが組み合わさった総合的な能力のことです。
ドラッカーは、このコミュニケーションに関して4つの基本(原理)を挙げました。
- 知覚である
- 期待である
- 要求である
- 情報ではない
そして、マネジメントにおけるコミュニケーションとは、同じ事実を違ったように見ていることを互いに知ることとドラッカーはしました。
そのためには、目標管理こそがコミュニケーションの前提となるともしました。
なぜなら、目標管理の最大の目的は上司と部下の知覚の仕方の違いを明らかにすることであるためです。
ヒアリング力
ヒアリング力とは、相手の話を理解するだけではなく、相手の感情やニーズ、その背景にある意図まで読み取って本質的な情報を引き出す能力のことです。
マネジメントにおけるヒアリング力について、まず、ドラッカーは次のようなことに着目しました。
「いまから40年ほど前、エルトン・メイヨーは、それまでのコミュニケーションに対するアプローチの欠陥に気づき、上に立つ者は下に立つ者が言わんとすることに耳を傾けなければならないと指摘した。部下に理解させたいことからではなく、部下が知りたがっていること、すなわち知覚する用意のあることから着手しなければならないとした。」
引用:【エッセンシャル版】『マネジメント 基本と原則』 P.F.ドラッカー【著】上田惇生【訳】



エルトン・メイヨーは、1927年に生まれた人間関係論の起源とされているホーソン実験を行った主要人物の一人です。
しかし、ドラッカーは耳を傾けることは前提であるが、それだけでは効果的なコミュニケーションは実現しないとしました。
その理由として、
「耳を傾けることは、上の者が下の者の言うことを理解して初めて有効となる。ということは、下の者にコミュニケーション能力があって初めてコミュニケーションが有効となるということである。」
引用:【エッセンシャル版】『マネジメント 基本と原則』 P.F.ドラッカー【著】上田惇生【訳】
と述べました。



もちろん、耳を傾けることが悪いと言っているわけではありません。
コミュニケーションは知覚であるという基本から聞く相手がいなければ成立しないため、耳を傾けることはすべてではなく、スタートにすぎないとしているだけです。
プレゼンテーション力
プレゼンテーション力とは、相手の理解・共感を通じて行動を促すために自分のアイデアや情報を分かりやすく伝えるコミュニケーション力の一つです。
コミュニケーションの4つの基本(原理)から、ドラッカーはコミュニケーションにおいて次のようなことが必要であるとしました。
- 相手の経験に基づいた言葉を使うこと
- 受け手が期待しているものを知ること
- 受け手の価値観や欲求、目的などを知ること
- 経験を共有すること
この4つを踏まえると、プレゼンテーション力において、重要となるスキルは主に以下となります。
- 論理的思考力
- 表現力
- 共感能力
- 臨機応変力
- 資料作成力



プレゼンテーション力はテクニカルスキルやコンセプチュアルスキルとも大きな関連がある能力であると個人的に感じています。
ネゴシエーション力(交渉力)
ネゴシエーション力とは、利害が異なる相手との合意を目指す話し合いを通じて双方が納得できる解決策を見つけ、長期的な信頼関係や協力関係、パートナーシップを構築する能力です。
そして、マネジメントにおいて主に必要な交渉力とは、コミュニケーションを通じて的確に相手に伝える力や相手に動いてもらう力です。
この2つの側面を踏まえて、知識または情報を基盤とする組織で成果をあげるためには、下記のようなことをしなければならないとドラッカーは述べています。
「情報型組織においては、あらゆる者が、上司と同僚に対し情報を与え、教育する責任を負う。そして全員が自らを理解してもらう責任を負う。そのためには、自らが負うべき貢献と成果についての責任を考え抜き、書きとめなければならない。そしてそれらのことが、上、下、横の人たちに理解されるようにしなければならない。
これこそが、相互信頼のための唯一の道である。組織は信頼を必要とする。信頼とは、相手に何を期待できるかを知っていることである。それは相互理解である。愛することでも尊敬し合うことでもない。互いが互いについて予見が可能であることである。」
引用:『ドラッカー名著集(4) 非営利組織の経営』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
そして、
「組織は、もはや権力によっては成立しない。信頼によって成立する。」
引用:『明日を支配するもの』 P.F.ドラッカー 上田惇生[訳]
「信頼が生まれるには、あらゆる反対意見が公にされ、真摯な不同意として受けとめなければならない。」
引用:『ドラッカー名著集(4) 非営利組織の経営』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
とも述べています。



つまり、組織を成立させている信頼を生むためには、意見の対立を建設的に使う必要があるとしたのです。
この理由として、重要な意思決定や変化には反対意見が必要なことや争いを二義的なものにすることなどを挙げました。



このように見ていくと、ネゴシエーション力(交渉力)とは総合力であると言うこともできますね。
コーチング力
コーチング力とは、コミュニケーションを通じて相手の成長や潜在能力を引き出し、主体的な行動を促す能力のことです。
この能力は、主に5つのスキルと3原則から構成されていると言われています。



これに対してティーチングとは、自分の知識やノウハウ、ある問題における答えを一方向的に教えることによって、理解を促す指導方法のことです。
マネジメントにおいて、ドラッカーは次のような考えを展開していました。
「知識労働者を直接あるいは細かく監督することはできない。彼らには助力を与えることができるだけである。知識労働者は自らをマネジメントしなければならない。自らの仕事を業績や貢献に結び付けるべく、すなわち成果をあげるべく、自らをマネジメントしなければならない。」
引用:『プロフェッショナルの条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
「自らをマネジメントするということは、一つの革命である(中略)。あたかも組織のトップであるかのように考え、行動することを要求する。」
引用:『明日を支配するもの』 P.F.ドラッカー 上田惇生[訳]



この内容は、まさしくコーチング力およびその必要性を示した内容です。
向上心
向上心とは、与えられた成果目標、またはそれより自分で設定した高い基準を達成するために必要な自己資源※を成長させたいという内発的動機に基づいた志向性※のことです。
※自己資源とは
スキルや知識、能力に加えて、パーソナリティや価値観などの内面的資質も含む内在的資源の総称のことです。
※志向性とは
簡潔に言えば、ある特定の何かに対する心や意識、姿勢などの方向性のことです。



これに関して、現象学の創始者であるエトムント・フッサールという人物の理論がありますが、ここでは省略しておきます。



これは普段のマネジメント業務やドラッカーの次のような考えを基に独自に生み出した定義です。
「成長するということは、能力を習得するだけでなく、人間として大きくなることである。責任に重点を置くことによって、より大きな自分を見られるようになる。うぬぼれやプライドではない。誇りと自信である。一度身につけてしまえば失うことのない何かである。目指すべきは、外なる成長であり、内なる成長である。」
引用:『ドラッカー名著集(4) 非営利組織の経営』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
上記も含めて、ドラッカーのマネジメント理論において、次のような内容があります。
「自らを成果をあげる存在にできるのは自らだけである。他の人ではない。したがって、まず果たすべき責任は、自らの最高のものを引き出すことである。」
「しかも人に信頼され、協力を得るには、自らが最高の成果をあげていくしかない。」
「成功の鍵は、責任である。自らに責任を持たせることである。あらゆることがそこから始まる。大事なことは、地位ではなく責任である。責任ある存在になるということは、真剣に仕事に取り組むということであり、成長の必要性を認識するということである。」
引用:『プロフェッショナルの条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
他方で、ドラッカーは、
「リーダーシップとは模範になることである。(中略)リーダーは模範たるべき者である。」
引用:『ドラッカー名著集(4) 非営利組織の経営』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
と述べています。
つまり、模範となることも踏まえてマネジメントには向上心が必要であるとドラッカーは説きました。



加えて、この考えから向上心はコーチングとも関係が深く、また向上心における内発的動機には責任が含まれていると言えます。
ヒューマンスキルの学習・向上によるメリット
カッツモデル誕生の背景の一部と関連しますが、ヒューマンスキルは生まれつきや天性のものではなく、学習・向上させていくことができます。
このお話を踏まえて、ヒューマンスキルを学習・向上すると次のようなメリットがあります。
- キャリアアップにつながりやすい
- 組織内におけるカイゼンの促進
- 生産性および業務効率の向上
- エンゲージメントの向上
- ストレスや不満の軽減による離職率の低下
- 問題解決力の向上
- イノベーションの促進
- 外部関係者との良好な関係の構築
- セルフマネジメントの学習・向上
- ウェルビーイングの向上



では、このスキルを学ぶ、あるいは向上させるとどのようなメリットがあるのかということについて詳しくお話ししていきます。
キャリアアップにつながりやすい
まず、ヒューマンスキルの学習および向上によるメリットは、自身のキャリアアップにつながりやすくなることです。
マネジメント階層によって多少内容は変わってきますが、ヒューマンスキルは、どの階層でも一定の割合で求められるスキルです。
そのため、ドラッカーの考えも踏まえて、管理職を目指す、あるいはマネジメントを行う上でヒューマンスキルは絶対に欠かせません。
さらに、ヒューマンスキルを通じて上司や上層部の人とよい関係を構築できれば、チャンスがもらえる可能性や機会を増やすことができます。
実際、ドラッカーのマネジメント理論でも、
「成果をあげるためには、上司の強みも生かさなければならない。」
引用:『プロフェッショナルの条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
とされています。



しかし、正直、ここは上司や会社によるところもあるため、どうしようもないと感じた場合は転職や自立を視野に入れてみましょう。
組織内におけるカイゼンの促進
ヒューマンスキルを学習または向上させた場合、組織内における様々な要素のカイゼンが見込めます。
生産性および業務効率の向上
まず、ヒューマンスキルの学習および向上は、マネジメント業務である組織運営や人材管理、動機づけなどのレベルを向上させることができます。
その結果として、組織全体における生産性および業務効率の向上をもたらし、またドラッカーによれば、
「生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義である。」
引用:『ドラッカー名著集(1) 経営者の条件』 P.F.ドラッカー【著】 上田惇生【訳】
としています。



そのため、生産性の向上によって組織内の人間関係も向上するという好循環が生まれることになります。
エンゲージメントの向上
エンゲージメントとは、人や組織、活動などにおける心理的なつながりや関係性、自発的な関与の深さや質のことです。
ヒューマンスキルの学習および向上は、このエンゲージメントを向上させることができます。
ストレスや不満の軽減による離職率の低下



離職する理由の上位の一つに、職場における人間関係の悪さ、またはそれに対するストレスや不満がよく挙げられています。
つまり、ヒューマンスキル、特にネゴシエーション力を通じて人間関係をカイゼンできれば、人間関係の悪さによるストレスや不満の軽減や離職率の低下をさせることができます。
問題解決力の向上
ヒューマンスキルの学習および向上によるコミュニケーション力の向上は情報の非対称性※の低下をもたらします。
※情報の非対称性とは
当事者間における情報の格差のことを指す経済用語です。
そして、ファシリテーション力やネゴシエーション力も向上するため、結果として組織内における問題解決力の向上ももたらします。
イノベーションの促進
さらに、ヒューマンスキルの学習および向上による各8つの能力の向上は、イノベーションの促進をもたらします。
なぜなら、イノベーションは生産性の向上や問題解決、より高い成果をあげるために必要になってくるからです。
外部関係者との良好な関係の構築
ヒューマンスキルの学習および向上によって、組織内部だけでなく外部関係者と良好な関係を構築することができるようになります。



外部関係者は他部署のことも含み、またこれは特にネゴシエーション力の向上によってもたらされるメリットです。
外部関係者との良好な関係の構築は、生産性や問題解決力の向上、イノベーションの促進につながります。
加えて、それらの結果として、組織またはチームにおいてより高い成果をあげることにもつながります。
セルフマネジメントの学習・向上
ヒューマンスキルの学習および向上によって、セルフマネジメント力の学習および向上をもたらします。
セルフマネジメント力とは、目標達成や自己実現のために自分の行動や感情、思考を意図的かつ効果的に管理することによって、自分にとって最大のパフォーマンスを発揮する能力のことです。
- メンタルヘルスケア(セルフケア)
- レジリエンス
- アンガーマネジメント
- マインドフルネス
- セルフモチベーション
- タイムマネジメント
- セルフコントロール
- キャリアデザイン



ドラッカーが唱えた自己マネジメントする要素をマネジメントするために、このセルフマネジメント力が必要になってきます。
ウェルビーイングの向上
最後に、ヒューマンスキルの学習および向上を通じたセルフマネジメントの学習および向上によって、ウェルビーイングも向上します。
ウェルビーイングとは、身体的・精神的に健康であるだけでなく、社会的・経済的側面も含めて良好によく満たされた状態のことです。
ハーバード大学医学大学院・精神医学教授 ロバート・ウォールディンガー氏が主導した約85年に渡る成人発達研究では、人の幸福度に関して以下の結果が言われています。
「健康で幸福な人生を送るための唯一無二のベストな選択は、友好的な人間関係を育むことだ。」
引用:『グッド・ライフ』ー幸せになるのに、遅すぎることはない



つまり、ヒューマンスキルを通じた関係性の構築によって自分だけでなく、組織やチームにおけるメンバーのウェルビーイングも向上させることができるということです。
ヒューマンスキル育成における課題と解決策
ヒューマンスキル育成における課題とそれに対する解決策して、主に次の3つが挙げられます。



課題に関しては個人的にも正しいと思いますが、実際のその解決策はどうなのかということを軸にお話ししていきます。
効果測定・定量評価が難しい
ヒューマンスキルは定量化または数値化が難しいため、そのことに伴って効果測定および定量評価することも難しいことが課題としてあります。
例えば、「コミュニケーション力が20%向上した」などと測定および評価することが困難であり、またそれも主観的になりやすいということです。
ドラッカーのマネジメント理論にもありますが、この対策としてフィードバックを用いた方法がよく挙げられます。



もちろん、それも有効的な手段ですが、個人的には行動まで分解して、それができているかどうかを測る方法が有効だと思っています。
例えば、コーチング力に必要な5つのスキルの中で何個できているか、あるいは配点方式にして総合点は何点かを出すという方法です。
<コーチング力を効果測定・定量評価する際の例>
評価項目 | チェック | 点数 |
---|---|---|
傾聴力 | 〇 | 10点/15点 |
質問力 | 〇 | 15点/25点 |
承認力 | × | 5点/20点 |
(フィードバック力) | 〇 | 25点/30点 |
(リクエスト力) | × | 0点/10点 |
総合結果 | 3個/5個 | 55点/100点 |



あくまで例であることから単純にしていますが、本来は、例えば「○○と聞いたか?」などと主観的判断ができる限り入らないくらいの単位まで細かく分解していきます。
長期的になりやすい
ヒューマンスキルは一部コンセプチュアルスキルの要素も含むため、育成が長期的になりやすいことも課題として挙げられます。
コンセプチュアルスキルとは、全体を俯瞰しながらあらゆる物事の本質を捉えて適切な判断や戦略的な意思決定などを行う概念化能力のことです。
ヒューマンスキルを育成するためには、価値観や思考力、思考方法などの内面的要素の変更および育成をする必要があります。



そして、これらの内面的要素を変えるには基本的に最低6ヶ月程度はかかるとされているため、どうしても長期的になりやすくなってしまうというわけです。
この対応策としては、このことを受け入れて研修カリキュラムを組む方法が一般的に挙げられます。



しかし、正直、あまり適切とは言えないですが、ある意味期間を短くする方法は個人的にあります。
それは、認知的不協和※という心理効果を用いてヒューマンスキルの定着または向上する行動をさせる方法です。
認知的不協和とは、自分の考えと行動が一致していないと人は不快な状態になるため、考え方の方を変えてしまう心理的傾向のことです。
ヒューマンスキルはコンセプチュアルスキルの要素だけでなく、テクニカルスキルの要素も含んでいます。
テクニカルスキルとは、特定の業務に関連する知識や技術、手法などを駆使して実務を遂行する能力のことです。
つまり、ヒューマンスキルが定着または向上する行動にフォーカスしてやらせていけば、自然と内面的要素もその方向に変わるということです。



そして、新しい習慣は平均66日、簡単なものであれば1ヵ月程度で形成することができるとされています。
よって、もちろんちゃんとできているか確認はしないといけませんが、育成にかける業務負担は1ヵ月~2ヵ月程度で済ますことができます。
当事者の意識に左右されやすい
他方で、ヒューマンスキルは特段正解がないことも含めて、当事者の意識に左右されやすいことが課題として挙げられます。
どの研修や育成においても言えますが、特にヒューマンスキルの育成では当事者の意識や許容性が問われます。



もちろん、こちらもできる限りのことは尽くさないといけませんが、どうしても限界があります。
実際、ドラッカーも受け手の心が変わるケースはきわめて稀であるとしています。
この解決策として、フィードバックや組織文化、環境によって当事者の意識を変える方法があります。



個人的に有効的な解決策としては、先ほどの認知的不協和などの心理学や行動経済学を用いたアプローチ方法があります。
組織文化・環境の影響を受ける
ヒューマンスキルの育成における課題の解決策の一つとして組織文化や環境を挙げましたが、場合によって逆にそれらの影響を受けることが課題になることがあります。
例えば、従来のトップダウン式の文化が根強い組織文化では、ネゴシエーション力や向上心の育成が難しくなります。
なぜなら、意思決定や権限がトップに集中することから交渉の余地がなくなり、またそれに伴って行動も制限されてしまうからです。



つまり、しっかり組織文化や環境を整備し、それに沿った方針のヒューマンスキルの育成をしていく必要があるということです。
ヒューマンスキルのトレーニング方法
先ほどの話も踏まえて、自身のヒューマンスキルのトレーニング方法として下記のような例がよく挙げられます。
- コミュニケーションの傾向診断
- 研修・ワークショップで学ぶ
- 人事が評価する観点をもとに学ぶ
- フィードバックから学ぶ
- PDCAサイクルを意識して学ぶ



もちろん、このような方法も友好的ですが、特に研修やワークショップはなかなか手がつけにくいですよね…
そこで、個人的に思う手軽にできてとても効果的な方法を教えていきます。
アニメ・映画・漫画・ドラマを観ること
ほとんどの方が普段からしていることだと思いますが、個人的にアニメ・映画・漫画・ドラマを観ることは非常に効果的なヒューマンスキルのトレーニング方法であると感じています。
なぜなら、各登場人物の人生観や価値観、視点、心情、あるいはそれらの形成過程など多くのことを学べるからです。



特にヒューマンストーリーや成長、感動がある作品が効果的であると感じています。
例えば、少し前ですが、週刊少年ジャンプで連載されていた『NARUTO -ナルト-』では次のようないいセリフがたくさんあります。
- 「自分を信じない奴なんかに努力する価値はない」
- 「忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる………けどな!仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ」
- 「“火影になった者”が皆から認められるんじゃない “皆から認められた者”が火影になるんだ …仲間を忘れるな」



その他として、『CLANNAD(クラナド)』や『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』なども個人的にはオススメです。
ただし、ここで肝心なことは、これらを観るだけでなく、観て学んだことをインプットとアウトプットすることです。
例えば、『NARUTO -ナルト-』における言葉を借りて、メンバーを大切にするために組織文化や規律の見直しを行うなどが挙げられます。



よって、ただ観て面白いと思うだけでなく、そこから学んで実践していくことが効果的なヒューマンスキルのトレーニング方法であるということです。
本を読むこと
漫画や動画作品を観ることに加えて、本を読むこともヒューマンスキルをトレーニングする方法として効果的です。
なぜなら、本を読むことによって知識だけでなく、著者の視点や考え方も学ぶことができるためです。



個人的には小説やラノベ系はあまり読まず、関心のあることや必要だと感じる分野の本を読むことが多いです。


心理学・行動経済学を学ぶこと



自分が読んでいる本の例や話から察せるかもしれませんが、ヒューマンスキルのトレーニングでは心理学や行動経済学が役に立ちます。
行動経済学とは、経済学にユーザー(消費者)視点の実際の行動から理論を形成する心理学的一面を合わせた帰納法※的学問のことです。
※帰納法とは
複数の具体的な事例や現象から、一般的な原理や理論を導き出す演繹法とは対になる思考法のことです。
Tokky(とっきー)は、
- リゼロ
- アオのハコ
- キングダム
- ヴァイオレット・エヴァーガーデン
が好きである。



Tokky(とっきー)はアニメが好きである。
このような学問や知識を学ぶことによって、その人がどういう感情を抱いているのかなどを見極めることができるようになります。



加えて、相手の考えや感情も読み取れるようになるため、この分野の学問はヒューマンスキルのトレーニングとして効果的です。
まとめ|ヒューマンスキルとは具体的に何を指しているのか?
マネジメントにおけるヒューマンスキルとは、具体的に、
の8つの能力を指しています。
そして、管理職の方やマネジメントを行っている方、もしくはそれを目指している方にとっては絶対に持っていなければならないスキルです。
なぜなら、現代において、そのような方たちだけでなく、誰にとっても必要なスキルだからです。



これより、ヒューマンスキルの学習・向上が、キャリアアップを目指す上で一番といっても過言ではないくらい重要と言えます。
そのトレーニングにおいて、
- アニメ・映画・漫画・ドラマを観ること
- 本を読むこと
- 心理学・行動経済学を学ぶこと
が、お手軽かつ効果的だと個人的に感じるオススメの方法です。



特に一番目はもう普段からしているはずだと思うので、ちょっと意識を変えるだけで済みます。
これを機会にぜひ、ヒューマンスキルの学習・向上には励んでキャリアアップを目指してみてください!